精索静脈瘤は男性不妊症と診断された方の約半数以上に見つかり,治療により治す事のできる数少ない病気の1つです.
治療法としては顕微鏡下精索静脈瘤手術(低位結紮術)が推奨されていますが,当クリニックでは局所麻酔下の日帰り手術として行っています.
当クリニックでは2016年9月の開院後,2023年4月末までに824例の顕微鏡下精索静脈瘤手術を行っていますが,問題となるような合併症は経験しておりません.
全身麻酔ではなく局所麻酔を選択する理由として,①麻酔のリスクが少ない,②治療費の負担が軽くなる,などが挙げられます.
また,当クリニックでは他施設に比べて,両側に手術を行う症例が多く,その理由を質問される事もあります.
精索静脈瘤は視診や触診で程度を分類する古い方法が現在でも主流であり,超音波検査は補助的な位置付けです.
しかし,視診や触診は客観性に乏しい面もあり,当クリニックでは精索静脈瘤が確実に描出できる超音波検査による診断を重要視しています.
当クリニックでは精索静脈瘤を診断する際に超音波検査を泌尿器科専門医と超音波専門医の両方の資格を持つ医師が入念に行っています.
そのため,他施設では見落とされたものが,当クリニックでは確認される事もしばしばです.
最近の報告では,程度の軽い精索静脈瘤でも手術を行った方が治療成績が良い,両側性の場合は片方の程度が軽くても両側に手術を行った方が治療成績が良い,との報告が散見されます.
- 精索静脈瘤が触知できた場合,超音波検査で確認するべきである(EAU Guidelines on Male Infertility 2019)
- 丁寧な診察と陰のうUSを施行すると,精索静脈瘤は左だけではなく,右にも確認される事が多い(Varicocele: a bilateral disease.Fertility and Sterility. 2004; 81: 424)
- 顕微鏡下精索静脈瘤手術を施行すると,総運動精子数の改善はクリニカル群もサブクリニカル群で同等であり,改善の程度の割合においても同等であった(The Impact of Microsurgical Repair of Subclinical and Clinical Varicoceles on Total Motile Sperm Count: Is There a Difference? Urology. 2018; 120: 109)
- 精索静脈瘤が両側(左がクリニカル,右がサブクリニカル)の場合,両側に手術を施行した方が治療効果は良好であった(Bilateral is superior to unilateral varicocelectomy in infertile males with left clinical and right subclinical varicocele: a prospective randomized controlled study. International Urology and Nephrology 2018; 50: 205)
他施設で左精索静脈瘤に対する顕微鏡下低位結紮術を施行され,効果が不十分だった症例に当クリニックで超音波検査を行うと右にも精索静脈瘤が確認され,右精索静脈瘤に対する顕微鏡下精索静脈瘤手術を施行した結果,さらに精液所見が改善する症例も経験しています.
そのため,当クリニックでは超音波検査で両側に精索静脈瘤を認めた場合,両側の手術をお勧めしています.
当クリニックでは生殖医療(不妊治療)を行っていく上で,男性もできるだけベストの状態に近づくように治療をした方が良いと考えています.
その方がパートナーである女性側の負担が軽くなる可能性があるからです.
精索静脈瘤に対する顕微鏡下精索静脈瘤手術は男性側の治療法として有用性の高い方法です.
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